『"東洋の神秘" ザ・グレート・カブキ自伝』を読みました
この本はビジネス書・哲学書です
先日購入した『"東洋の神秘" ザ・グレート・カブキ自伝 (G SPIRITS BOOK)』をようやく読み終えました。これはただのプロレス本ではなく、ビジネス書とか哲学書と言ってもいいような深い内容の本でした。
日本プロレス入門から現在までの軌跡
もちろんカブキさんの自伝ということで、日本プロレス入門から全日本、SWS、それからインディー団体を渡り歩いて、飲食店を経営するまでの一通りのことが書かれています。
プロレスの話で言うと、今まであまり知らなかった入門から海外遠征に出るまでの部分、ザ・グレート・カブキの誕生や得意技の生まれた経緯、SWS時代のことなんかは、はじめて聞くことも多く、すごくおもしろかったです。
お店で聞いたのと同じ話だ!
読み進めていて最初に驚いたのは、この本に書かれている話は、直接お店で伺った話も多かったのですが、これが見事に同じなんです。
本人の話なんだから当たり前でしょと思われるかもしれませんが、そういう意味ではなく、お酒を飲んで話が大きくなっているとか、昔の記憶が曖昧で言うことが変わっていたというようなことがなかったということです。
他の商売あるいは人でも同じようなもので、一貫性のない毎回言うことが変わるような人はあまり信用できません。
まあファンからすると、話を直接聞けるということだけでも感激してしまえるわけですが、ファンであるからこそ、いい話であれば何度でも同じ話も聞きたいという心理も働きます。きっとそういうファンががっかりしないように、何をどのように話すかをきっちりと決めておられるのだと思います。
これぞプロの仕事だ!
全般的に非常によい本でしたが、これは本当にそうだと感銘を受けたのは次の2カ所でした。まず、
俺がメークやヌンチャクといったギミックだけに頼っていたら、こうはならなかったと思う。格好だけ派手なレスラーは、興味を持たれてもすぐに飽きられてしまう。どんなに派手な格好をしていようが、重要なのは試合の中身なのだ。
もう仰るとおりでして、ウェブ制作なんて仕事をやっていますと、新しい技術が出るとつい使いたくなったりすることもあるわけなのですが、この世界2年くらい前の技術だと古く感じられることも多いわけです。ビジュアル面だってそうです。
でも古い枯れた技術を使っているウェブサイトであっても、本当に役に立つものは使い続けますし、やはり中身が大事なんですよね。これをあらためて教えられました。
もう1点は、
使える技を制限されているからこそ、観客が沸くような試合の組み立てを覚えられる。
これは当時の若手レスラーは、メインでのスター選手を引き立たせるために、前座試合では大技を控えるようになっていたということからきています。使える技が少ないから工夫する、考えるようになるということなんです。
ボクシングなどの他の格闘技や陸上競技などは極端な話、観客が一人もいなくても競技は成立します。ところがプロレスは観客がいなければ、そもそも成立しないスポーツですし、ただ体を鍛えて強ければよいわけでなく、相手との呼吸も必要な難しい格闘技なのです。
僕たちの仕事でもお金を払ってくれるのはお客さんなのですが、それと同時にウェブサイトへの訪問者に、限られた条件の中(予算とか制作期間ということではなく、シビアな目を持った訪問者に対し、いかに上手に内容を伝えるか)で、何を提供できるのかを考えなければなりません。
相手選手と観客を同時に相手しなければならないプロレスと共通する部分ではないかと深く考えさせられました。
ではこの本はおすすめの本なのか?
という問いに対しては、全てのプロレスファンに対しておすすめですと断言します。特にプロレスが好きでビジネスに悩んでいる人にとっては、ヒントになることが多いので、ぜひとも買って読んでください。そしてカブキさんの話を直接聞いてもらいたいと思います。
では、プロレスファンでない人にはどうかというと、マシオ駒って誰? 浅野起州って何者? とか、スパイロス・アリオンとかジョン・トロスっておいしいの? ということになりそうなので、せめて80年代のプロレスを一度はテレビで見たことのある人でないと、全編に渡って内容が理解できないとは思います。
この記事をフォルトゥナ ブログにするか、このブログにするか悩んだのですが、こちらを選んだのは上記の通り、わからない人にはちっともわからないであろうということが理由ですw
いやー、本当に来月の忘年会が楽しみになってきました。先日の50周年記念試合の打ち上げに参加できなかったもので、その分も楽しみたいと思っております。
ちなみに東京出張時にカブキさんのお店「かぶき うぃず ふぁみりぃ」は食事も美味しいので、東京に行く人は無理にでも寄ってみるとよいと思いますよ。